【1人用朗読台本】夢の案内人

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上演時間 約13分


【あらすじ】
 はるとくんが眠れずにいると、ママが古いフクロウのぬいぐるみを持ってきて,そのフクロウと一緒に巡った夢の世界のお話を聞かせてくれます。




夜ごはんとお風呂を終えたはるとくんはそれでも元気です。お気に入りの恐竜柄のパジャマ姿で遊んでいます。時計の短い針が8の数字を指しています。
「はると、もう寝る時間よ」
 ママが言いますが……
「えー、ぼくまだねむたくないよー」
 はるとくんはまだまだ遊びたいようです。
「そんなこと言って。朝起きれなくなっちゃうよ」
 はるとくんは渋々ベットに入ります。
「でもママ。ぼく、ほんとうにねむたくないんだ」
 はるとくんはベットの側に座るママに言います。
「困ったわね・・・・・・あ、そうだ」
 ママは何かを思いついたらしく、はるとくんのお部屋から出ていきました。はるとくんがベットの中でしばらく待っているとママが戻ってきました。手には少し古いフクロウのぬいぐるみがあります。
「ママ、それなあに? 」
「ママが小さい頃からずっと大事に持っているフクロウのユメちゃん。ママがはるとくんと同じくらいのとき、よく一緒に寝ていたの。
フクロウさんと一緒に寝るとなぜか不思議で楽しい夢を見ることができたのよ。今日はその夢のお話をしようと思って」
「なにそれ? 面白そう! 」
 はるとくんはフクロウのぬいぐるみとママのお話に興味深々です。
「絵本を読むのもいいけど、たまにはこういうのもいいでしょ? 」
 ママはフクロウのぬいぐるみをはるとくんに渡すと、昔見た夢について話出しました。
 


 (咲ちゃん(ママ)の夢の中。ふかふかした雲の上で眠っている。そこに先程のぬいぐるみと同じフクロウが飛んできて声をかける)
「おーいさきちゃん、起きて、起きて! 」
 フクロウのユメちゃんは雲の上ですやすや眠るさきちゃんを起こします。
「ふぁ・・・・・・ここは、どこ? 」
 咲ちゃんは両手で目を擦りながらユメちゃんに言います。
「ここは夢の中だよ。咲ちゃん、僕が夢の中を案内してあげるから一緒に遊ぼう! 」
「うん! 遊ぼう! 」
 咲ちゃんは飛んでいるユメちゃんを追いかけました。
「ところでここはどこ? 」
 あたり一面に広がるもふもふの世界を見渡しながら咲ちゃんはユメちゃんに聞きます。
「ここは雲の国。ふかふかの雲で遊びたい放題! 雲でできた滑り台やトランポリンもあって楽しいよ! 」
「素敵! 早速遊びましょう! 」
  咲ちゃんとユメちゃんはもふもふした雲の中を駆け回ります。雲でできたトランポリンは普通のトランポリンよりも高く飛んで、滑り台はとても高いのに地面がふかふかなおかげで全く怖くありません。雲の国では他にも咲ちゃんと同じくらいの子どもたちが遊んでいて、みんな楽しそうです。
 咲ちゃんが雲の中で遊んでいると、どこからか羊たちたくさんがやってきました。みんな雲のようにふかふかのもこもこです。そのうちの1匹が咲ちゃんのところへやってきました。咲ちゃんを背中に乗せたいようです。
「背中に乗ってもいいの? 」
 咲ちゃんは羊に聞きました。羊はこくりと首を動かしました。
「やったー! 」
 咲ちゃんは羊の背中に飛び乗りました。羊は咲ちゃんを乗せてゆっくりゆっくり歩きます。羊の毛は見たとおりふかふかもこもこで、おまけにとても暖かくて、まるでおひさまの光を目一杯に浴びたお布団のようです。咲ちゃんは羊の背中で思わずうとうと・・・・・・
「咲ちゃん起きて起きて! 」
 するとユメちゃんが咲ちゃんのところへやってきました。
「僕まだ咲ちゃんと遊びたいからねちゃだめだよ! 」
「どうして寝てはいけないの? 」
 ユメちゃんの声で目が覚めた咲ちゃんはユメちゃんに尋ねました。
「夢の中で寝てしまうと夢から覚めて起きてしまうんだ。起きちゃったら私は咲ちゃんと一緒に遊べないよ」
「それはやだな。わかった、まだ寝ないでおくね」
 咲ちゃんは答えました。
「夜はまだまだ長いよ。さて咲ちゃん。他にも素敵なところがいっぱいあるんだけど、咲ちゃんはなにをしたい? 」
 ユメちゃんは聞きます。
「私、遊んだらお腹が空いてきちゃった。甘ーいお菓子が食べたいな」
「それなら僕がいいところを知ってるよ! こっちこっち! 」
 咲ちゃんとユメちゃんは雲の国を後にしました。
 


「わぁ、すごい! 絵本で見たお菓子の家だ! 」
 次にユメちゃんが案内してくれたのはまるでヘンゼルとグレーテルのお話に出てくるようなお菓子の家のある森でした。お菓子の家はクッキーにチョコレート、キャラメルにマシュマロと、全て咲ちゃんが大好きなものでできていて、とても大きなお家です。
「これ、全部食べちゃっていいの? 」
 咲ちゃんは目をキラキラさせながら言いました。
「もちろん」
「やったー! 」
 ユメちゃんの答えを遮るように咲ちゃんはお菓子の家に走っていきました。ビスケットでできた壁は咲ちゃんが見たこともないような大きさで、屋根に使われているチョコレートはミルク、ホワイト、ストロベリーととてもカラフルです。他にも壁を飾るキャラメルやキラキラ光るグミ、扉を飾るドーナツのリースなど、どこを見渡してもお菓子だらけです。咲ちゃんは一つ一つそーっと手に取りながら口の中に入れていきます。どのお菓子も咲ちゃんが今まで食べてきた中で一番美味しいものばかりです。
「甘くて美味しい! ついついたくさん食べちゃうよ。でも……」
 咲ちゃんは顔を曇らせました。
「どうしたの? 」
 ユメちゃんは心配そうに聞きます。
「この間読んだ絵本に書いてあったんだけど……お菓子の家にはこわーい魔女が住んでいて、
 お菓子を勝手に食べたらその魔女に食べられちゃうって……」
「なんだ、そんなこと。大丈夫。この家には魔女は住んでないよ」
「そっかよかった……でもちょっとだけ残念」
「残念? 」
 ユメちゃんは不思議そうに聞きます。
「こわーい魔女は嫌だけど……魔女には会ってみたかったなって思って」
 咲ちゃんは絵本が好きで、特に魔女の出てくるお話が大好きです。魔女に食べられるのは嫌だけど……咲ちゃんは魔法が使える魔女に会ってみたいなと前からずっと思っていました。
「そういうことなら僕、優しい魔女さんを知ってるよ」
 ユメちゃんは得意げに言いました。ユメちゃんは夢の中のことならなんでも知っています。
「本当!?私、魔女さんに会ってみたい! 」
 咲ちゃんはまた目をキラキラさせました。
「森を抜けてすぐのところに住んでいるんだ。早速行ってみよう! 」
 ユメちゃんは咲ちゃんを案内しました。
 

 咲ちゃんはれんが造りの小さな小屋の中にいました。隣には咲ちゃんよりも、大きな大きな女の人がいます。すらっとしていてお家の中なのに真っ黒なとんがり帽子をかぶって真っ黒なドレスを着ています。どうやら彼女が魔女のようです。魔女は大きなかまで何かをコトコトコトコト煮込んでいます。咲ちゃんは魔女に言われてカゴを持っています。カゴの中には薬草や見たことのないキノコなど、鍋に入れるための材料がたくさん入っています。魔女は咲ちゃんが持っているカゴに手を伸ばすとキノコを取って鍋の中に入れました。そした再び黙々と鍋の中をかき混ぜています。咲ちゃんは少し不安な顔をしています。
「ねえ、この魔女さん、本当にいい人なの?私、毒薬を作るの手伝わされてるわけじゃないよね? 」
 咲ちゃんは近くを飛んでいたユメちゃんに小さな声で聞きました。
「大丈夫だよ……多分。魔女が毒を作っていたことはないもの」
 ユメちゃんは少し不安そうではありましたが答えました。魔女は2人の会話を気にすることなくコトコトコトコトなにかを煮込みます。その間、ずっと鍋の中身を混ぜ続けていました。
「よし。やっとできた」
 鍋の火が消えた頃、ようやく魔女が口を開きました。
「久しぶりのお客さまだったから少し凝ったものを作ってみたの。ひと口飲んでみて」
 魔女があまりにも優しくいうので咲ちゃんはさっきまでの不安など忘れて魔女が作った薬をひと口飲みました。するとびっくり!咲ちゃんの体はみるみる軽くなってついに地面から浮いてしまいました。これは人を浮かせる薬だったのです。
「すごい!私空飛んでる! 」
 咲ちゃん嬉しくなってはおうちを飛び出しました。するといつのまにか箒にまたがった魔女も咲ちゃんのところにやってきました。ユメちゃんも一緒です。
「私、箒で空を飛ぶのが得意なの。だから一緒に空のお散歩でもどうかしらと思って」
 咲ちゃんは魔女とそしてユメちゃんと一緒に空のお散歩に出かけました。
 


(再び寝室。ママはお話を続けているがはるとくんは隣で眠っている)
「魔女さんと一緒に行った空のお散歩がとても楽しくてね」
 ママがそう言ってはるとくんの方を見るとはるとくんはすでにもう夢の中。スースー寝息を立てて眠っていました。ママははるとくんに布団をかぶせてあげると、フクロウのぬいぐるみを持たせてあげました。
「おやすみ、はると。ユメちゃん、はるとにも素敵な夢の中を案内してあげてね」

(了)

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