【3人声劇用台本】箱入り姫と大泥棒と最強騎士-はじまりの物語-

使用の際はこちらをご一読ください。

【あらすじ】
 大陸全土で指名手配されている大泥棒ジュールの次のターゲットはマトカリア王国の世界征服を可能とする宝石。早速マトカリア王国に乗り込むも、好奇心旺盛なルビィ姫、王国最強と言われる女騎士マリーヌに阻止されてしまう。なんとかして宝石を手に入れたいジュールであったが……

【登場人物】
 ジュール……大陸一帯で指名手配されている大泥棒。マトカリア王国に伝わる世界征服できる宝石を手に入れにやってきた。
 ルビィ……マトカリア王国の姫で魔力を使い、宝石を守っている。両親の過保護のせいで城からなかなか出してもらえない。
 マリーヌ……マトカリア王国最強と言われる女騎士。国王の命によりルビィの護衛を担当する。

 国王……マトカリア王国の王であり、ルビィの父親。
 街の人1
 街の人2

※国王、村人はそれぞれ兼ね役可能です。国王→ジュール、村人1、2→ルビィ、マリーヌが担当するとスムーズにいくと思います。




こちらの物語は「【4人用シナリオ】箱入り姫と大泥棒と最強騎士」のエピソード0として書かせていただいたものです。そちらもあわせて読んでいただけるとより楽しめるかと思います。

ジュール ふぅ。やっと着いた。思ったよりも遠かったな。
 
ジュール 『俺様は大泥棒のジュール。国をまたいで指名手配されてるんだから、自分で大泥棒と名乗ってもいいだろう?最近は大陸の南国にあるサイネリア王国を拠点に美しい宝石から、国に伝わる名画や美術品などを俺のものにしてきた。そんなある日、俺はある噂を耳にした。』
 
街の人1 マトカリア王国には、世界を征服する力を与えてくれる宝石があるらしい。
街の人2 その宝石は魔力を持つ一族が代々守っているんだそうだ。
 
ジュール 『これまで様々な宝を見てきたが、世界を征服する力を持つ宝石には出会ったことがない。大泥棒としては是非とも一目見ておきたいものだ。早速俺は、ここから北へ向かったところにある、マトカリア王国へと旅立った。』
 
(マトカリア王国の城)
ルビィ  お父様、私で本当に務まるのかしら?
国王   大丈夫だよルビィ。お前は生まれながらにして魔力を与えられた。ルビィなら宝石を守ってくれるって、ご先祖様が選んでくれたんだぞ。
ルビィ  そうは言っても、まだまだ魔力を扱いきれていないんだけど。
ルビィ  ・・・・・・この宝石取られちゃったら、世界がその人のモノになっちゃうんだよね?
国王   そうだ。これは決して誰の手にも渡してはならない。それと同時にこの務めは、お前にとっての修行でもあるんだ。
ルビィ  お父様も修行したの?
国王   もちろん。修行で得たのがこの力だ。大丈夫。宝石を守るのはお前だけではない。さぁ、入っておいで。
マリーヌ ・・・・・・お呼びですか、国王陛下。
ルビィ  お父様、この方は?
国王   彼女はマリーヌ。宝石とお前の護衛を任せた。
マリーヌ マリーヌ・フローレスです。
国王   彼女はマトカリア王国の中では最強と言われる騎士だ。彼女がいれば安心だろう。
ルビィ  お父様、護衛をつけてくれるのは嬉しいけど、そんな最強騎士さんを私一人を守るために置いて大丈夫なの?彼女、もっとやることあるんじゃない・・・・・・?
国王   何を言ってるんだ、お前を守るのはマリーヌくらいでないと、私も母さんも心配でお前から離れることができなくなってしまうよ。
ルビィ  まぁいいわ。お父様の過保護はいつものことよね。よろしくマリーヌ。仲良くしましょう。(手を差し出す)
マリーヌ お言葉ですが、私はあくまで姫様の護衛。お友達ではありません。
ルビィ  あらそう……なかなか気難しいのね。
国王   まぁ、マリーヌ。確かにお前は娘の護衛役ではあるけど、仲良くしてやってくれ。ルビィにも話し相手が必要だ。
マリーヌ ・・・・・・命令とあらば。
ルビィ  はぁ。なんだか先が思いやられるわ。
 
(マトカリア王国の街。街の人たちが噂している)
街の人1 宝石の所有者が、国王様からルビィ様に移ったらしい。
街の人2 なんでも魔力の修行のためだとか。
街の人1 姫様には男どもが束でかかっても倒せない、最強騎士マリーヌが護衛についたらしい。
街の人2 彼女がついているとなれば、少なくとも彼女の力を知る人間は宝石を狙わないだろう。
 
ジュール ふーん。なかなか面白いことになってるじゃん。
 
ジュール 『俺はマトカリア王国の街での情報収集を終え、宝石があるらしい城へと向かった。今、宝石の所有者は国王の娘だ。きっと彼女の部屋に潜入すれば、何かしらわかるだろう。俺は城の見張りの目をかいくぐり、塔のてっぺんにある姫の部屋を目指した。』
 
ジュール よっと。(部屋の窓を飛び越える)
ルビィ  ・・・・・・え?あなた・・・・・・誰?
ジュール お、あなたさまはマトカリア王国のルビィ姫かい?
ルビィ  そうだけど・・・・・・ていうかあなた、私の質問に答えなさいよ!
ジュール 俺様は天下の大泥棒様、ジュールだ。
ルビィ  自分で言っちゃうんだ、それ。
ジュール この国だけでなく、隣の国でも、いや大陸全体で指名手配されていたらそう名乗ってもいいかなって思って。
ルビィ  まぁすごい。それじゃあこの城の警備をかいくぐってもおかしくないわね。ねぇねぇ、泥棒さん。あなたは大陸中を回ってお宝を盗んできてるのよね?今まで盗んできた素敵なお宝の話や、外の世界のこと教えてくれない?
ジュール ・・・・・・お姫様、少しばかり警戒心てものがなさすぎないか?俺様が何を盗みにきたのかって知ってるだろう?
ルビィ  もちろん。私が守っている宝石でしょ?大丈夫。あれはなかなか見つからないところに隠してあるから。それに私、お城に閉じ込められすぎてて、好奇心が有り余ってるのよね。
ジュール 思ったよりも元気なお姫様だ。そーだな、その宝石を隠してある場所を教えてくれたら、俺の知ってることを全て教えてやってもいいぞ。
(ドアの開く音)
マリーヌ そうはさせないぞ、このコソ泥め。
ジュール おぉ、あんたが街で噂の最強騎士さんか。
マリーヌ 貴様は巷では大泥棒なんて言われているジュールだな。我が国でも指名手配されているぞ。
ルビィ  え、2人は知り合い?
ジュール 知り合い・・・・・・じゃなくて、お互い有名人なんだよ、お姫様。
マリーヌ 姫様、ボケたこと言ってないでください。何を犯罪者と呑気におしゃべりしてるんですか!
ルビィ  咄嗟のことだったからつい。
マリーヌ まぁよい。お前をこの場で捕らえる。(腰に差していた剣を構える)
ジュール おぉ、面白い。国内一の強さというのを、俺様が確かめてやるよ。(短剣を構える)
マリーヌ そんな小さな剣で、私に敵うと思っているのか。
ジュール これでも国宝級の短剣なんだぜ。どこの国から奪ったかは忘れちまったがな。
(剣が交わる音。マリーヌとジュールがやりあう。ジュールが部屋の壁に追い詰められる)
ジュール なるほど。確かに国内最強らしいな。いい腕をしている。
マリーヌ お前は言うほど大したことないな。どうして他の国のものはこんなやつに手を焼いているのだ。
ジュール 俺の本分は戦いじゃねえからな。
 
ジュール 『俺はワイヤーを天井に引っ掛けて騎士さんの剣から逃れる。そして俺は入り口として使った窓の方へと走った。』
 
ジュール 俺様は天下の大泥棒だからな。逃げるのは得意なんだ。じゃあな、元気なお姫様。また来るよ。今度はちゃんと宝石をいただきに。(窓から飛び降りる)
マリーヌ 逃げ足の速いやつめ。
ルビィ  マリーヌすごい!かっこいいじゃない!
マリーヌ えっ、いや・・・・・・私は宝石とあなた様を守るという使命を果たしていたまでで。
ルビィ  私、あんな間近で剣を交えているのを見るのは初めてだわ!疑ってたわけじゃないけど、マリーヌって本当に強いのね。
マリーヌ あ、あの・・・・・・姫様。
ルビィ  どうしたの?マリーヌ、顔が真っ赤よ。
マリーヌ その・・・・・・私のことをあまり褒めないでください。褒められなれていないもので・・・・・・。
ルビィ  え、でもマリーヌ、国一の騎士なんでしょ?褒められる場面なんてたくさんありそうだけど。
マリーヌ それはもちろん、公の場では数多くの勲章をもらいました。ですが、その、なんというか・・・・・・そんな真っ直ぐな目で
マリーヌ 褒められましても。
ルビィ  ふーん。マリーヌってお堅くて冷たい人だと思っていたけど、可愛いところあるんだね。
マリーヌ か、かわいいって・・・・・・(咳払い)もうからかうのはやめてください。それよりも、あのコソ泥はまたきます。あやつに宝石を取られないためにも策を練らなければ。
ルビィ  大丈夫よ。あなたの強さがあれば。それに、彼は宝石を見つけることはできないわ。とっておきの場所に隠してあるんだもの。
 
ジュール とっておきの場所ねぇ。
 
ジュール 『俺はお姫様と騎士さんが話しているのを、窓枠につかまりながら聞いていた。お姫様からしたらとっておきの隠し場所なのだろうけど、大泥棒の俺様にはもう目処がついていた。さっき騎士さんに追い詰められた時、壁に不自然な溝があることを、俺は見逃さなかった。普通のコソ泥だったら気にもとめないだろうが、そこに気がつくのが俺様が大泥棒と呼ばれる由縁でもある。場所はわかった。今夜再び忍びこみ、世界の全てを手に入れられる宝石をいただくとしよう。』
 
(夜。ルビィが部屋の扉を開ける。そこには腰に剣を差したマリーヌが立っている。)
ルビィ  マリーヌ。一体何しているの?
マリーヌ 見張りですよ。昼間来たコソ泥がまたいつやってくるかわかりませんから。
ルビィ  あなた一晩中ここに立っているつもりなの?
マリーヌ もちろん。見張りですから。
ルビィ  そんなことしていたら、あなたの体の方が壊れちゃうわ。もう休んでちょうだい。
マリーヌ 姫様は・・・・・・お優しいのですね。
ルビィ  え?
マリーヌ 私の父は私と同じく、この国の騎士です。私は強い騎士になるため、父に厳しく育てられました。立派な騎士は国のために身を投げ出す。そう教わってきたので、誰も私の体なんて心配してくれませんでした。昼のようにお褒めいただいたのも、今のように心配してくれたのも、姫様が初めてです。
ルビィ  そうなんだ・・・・・・。守られている身で言うなって話なんだけど、それでも私はマリーヌを犠牲にしてまで、生き延びたくはないわ。
マリーヌ やはり、変なことを言う姫様ですね。
ルビィ  マリーヌは騎士である前に私の友達だもの。失いたくはないわ。
マリーヌ 友達になった覚えはありませんけど。
ルビィ  あら。私は会った時から友達だと思っているけど?
マリーヌ ふふふ。
ルビィ  初めて私の前で笑ったでしょ?マリーヌは笑っている方が可愛いよ。
マリーヌ 私のことをあまりからかわないでください、姫様。
ルビィ  からかってなんてないよ。あと、姫様はもうやめて。ルビィでいいわ。
マリーヌ わかりました。ルビィ様。
ルビィ  様もいらないんだけどな。まあいいや。

ガタン(ルビィの部屋の中から物音がする)

ルビィ  なんの音?
マリーヌ いきましょう。
(ルビィとマリーヌが部屋に戻る。そこには壁のスイッチを押したジュールの姿)
ルビィ  え、ちょ、なんで?どうしてあなたが秘密のスイッチを知ってるのよ!
ジュール 天下の大泥棒さんを舐めてもらっちゃ困るよ、お姫様?
(部屋の床が開き、そこから宝石が出てくる。)
ジュール これが噂の宝石か。これで世界は俺様のもの。
マリーヌ やめろ、泥棒!
ルビィ  やめて!!
(ジュール、宝石を手に取る。すると宝石が光だし、ゴゴゴ・・・・・・と不穏な音がする)
ジュール え、何?これどうなってるの?
ルビィ  宝石が・・・・・・泥棒さんを飲み込もうとしている?
ジュール おい、姫様!これ一体どうなってるんだ?
ルビィ  わからない・・・・・・一体何が起きてるの?
マリーヌ ルビィ様、私には魔法とかよくわかりませんが、このまま放っておけばよくないことが起こるのは間違いないのでは?
ルビィ  おそらくね・・・・・・とにかく泥棒さん!その宝石から手を離して!
ジュール そうしたいのはやまやまなんだけどさ・・・・・・なんか、宝石が離れてくれなくて。
マリーヌ ルビィ様、なんとかできませんか?
ルビィ  待って、この間、お父様から聞いた呪文があるはずなんだけど・・・・・・
ジュール ちょっと、いよいよ飲み込まれそうなんだけど!!
ルビィ  あ、思い出した!
(ルビィがジュールの元へ駆け寄る)
マリーヌ ルビィ様!宝石へ近づいては危険です!
(ルビィがジュールの体に抱きつく。)
ジュール へ?お姫様?ちょっと、俺を引っ張り出そうとしてる?救出の仕方って魔法じゃなくて物理なの??
ルビィ  「汝、我が清らなる心の元に、力を抑えたまえ。静かなる、穏やかな湖の如く。」
(宝石の力が弱まり、ジュールの手から離れる)
ジュール 俺・・・・・・助かったの?
マリーヌ ルビィ様!!(マリーヌがルビィの元へ駆け寄る)
ルビィ  マリーヌ。
マリーヌ 全く。無茶しないでくださいよ。
ルビィ  マリーヌには言われたくないわ。
マリーヌ あなたが私のことを失いたくないように、私もあなたのことを失いたくはないんですからね。
ルビィ  ふふ。嬉しいこと言ってくれるわね。
(ルビィとマリーヌがジュールの元へ行く)
ジュール いたたた・・・・・・。俺、助かったのか?
ルビィ  どうやらそうみたいね。
ジュール 俺を・・・・・・助けてくれたのか?
ルビィ  私の使命をお忘れ?私はこの宝石を守るものよ。あなたはついで。でも・・・・・・あなたも無事でよかったわ、ジュール。
(ルビィがジュールに笑顔を向ける。ジュール、顔が赤くなる)
ジュール お、おう。あ、ありがとな・・・・・・
ルビィ  さぁ、大泥棒さん?今ここで逃げないと、あなたは最強騎士の手によって監獄行きになってしまうけど、どうする?
ジュール そいつは大変だ。お姫様のお言葉に甘えて、一時退散させてもらうよ。(窓から逃げる)
 
ルビィ  えっと。大泥棒逃しちゃったけど・・・・・・よかった?
マリーヌ あんなひどい目にあって再び宝石を狙いにくるとは思えません。今回だけは、ルビィ様の優しさに免じて見逃してあげます。

ジュール 『俺様はあの時、ルビィ姫に惚れてしまった。俺様は大泥棒で、有名人で、いろんな奴らに追われているが、俺様のことを心配してくれる奴など誰一人いなかった。捕まえることさえできれば俺様の生死など誰も気にしない。そういう風に思われてもしょうがないと思っていたし、慣れているつもりだった。しかし俺様はルビィ姫の優しさに触れてしまった。口ではついでなんて言われてしまったけど、それでも俺様のことを命懸けで助けてくれたルビィ姫……こんなことで惚れてしまうなんて随分ちょろい人間だと呆れもしたが、それでも俺様は彼女を……ルビィ姫を自身のものにしたい、そう思った。俺様は大泥棒ジュール。狙った獲物は必ず手に入れる。ルビィ姫も必ず俺様のものにしてみせる、俺様はそう心に誓った。』


(後日、ルビィの部屋)
ルビィ  お父様から聞いたわ。あの宝石は魔力の持つ者以外が触れると、その人に世界征服の力を与える代わりに、宝石に乗っ取られてしまうって。
マリーヌ 力を与えられる代償が、自身の肉体なのですね。
ルビィ  誰の手にも渡してはいけないとは聞いていたけど、まさかこんなことになるなんてね。全くお父様も説明が足りないわ。
ジュール つまり、お姫様の力も一緒に奪ってしまえば、意のままに世界を操ることができるんだね。
マリーヌ お前、いつの間に!
ルビィ  あなた、あんなひどい思いしてもまだあの宝石が欲しいの?
ジュール まさか。世界征服の力は魅力的ではあるけど、俺様そんなものよりも欲しい物ができちゃったんだよね。
ルビィ  何よそれ?あの宝石以上に魅力的なお宝なんて、この城にあったかしら?
ジュール あぁ、目の前に。
ルビィ  ここには何もないけど?
ジュール 俺様が今最も手に入れたいもの・・・・・・それは君だよ。俺のお姫様。(ルビィの手の甲にキスする)
ルビィ  ・・・・・・!!!
マリーヌ その汚らわしい手をルビィ様からはなせ、このドブネズミが!
ジュール おやおや?騎士さんは随分とお怒りのようだね。
マリーヌ この間は見逃してやったけど、今回こそはお前を捕らえてその口聞けなくしてやるぞ。(剣を構える)
ジュール 泥棒らしく、お姫様をこのお城から盗んでやろうと思ったんだけど、今日は無理そうだね
ジュール ・・・・・・でもいつか本当に俺のものにしてみせるから待っててね、俺のお姫様。(窓から飛び降りる)
マリーヌ あのドブネズミ、必ず牢獄にぶち込んでやるからな!!

(了)

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