【4〜5人用声劇台本】妖精たちは人間の男を手玉に取れない

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【あらすじ】
 森の奥、妖精のフロウ、エブリン、ハーパーは暇を持て余していた。そんな時、森の奥に人間の男がやってきた。3人は男をからかってやろうとするが……

【登場人物】
 フロウ……気の強い妖精。3人組のリーダー的存在。
 エブリン……おしゃれとかわいいが大好きな妖精。
 ハーパー……以前人間が落としていったであろうクッキーを食べてからスイーツに興味津々。魔法で作り出そうと毎日頑張っている。
 オーウェン……妖精の森にやってきた人間の男。
 長……美しい妖精族の長。薬学に精通しており、妖精たちの病気は大体彼女が治す。

※セリフ数の少ない長はハーパーとの兼ね役可能です。






(森の奥深く。ここには美しい妖精たちが暮らす住処がある。そこに3人の妖精、フロウ、エブリン、ハーパーが退屈そうにしている)
フロウ   あーひまひま。今日も退屈だわ。エブリン、なんか面白いことなーい?
エブリン  えー?面白いことがあったらとっくに提案してるしぃ。
フロウ   そうだよね。ハーパー、あんたはどう?
ハーパー  (魔法の書を必死に読み漁りながら)今日こそ、今日こそは……マカロンというものを作り出すの……甘ーい甘ーいやつ……
フロウ   だめだ、相変わらずスイーツ作りに没頭しているわ。
エブリン  パーちゃんも毎日毎日飽きないよね……
フロウ   そんなに甘いもの食べたいなら人間の里降りて行けばいいのに……
ハーパー  それ本気で言ってる?人間が私たちを見たら何をされるか分かったもんじゃないわ。
エブリン  なあに?パーちゃんまだ人間のことビビってるの?
フロウ   まあ、うちら妖精の間じゃ、一昔前までは人間は怖いもの、絶対に関わっちゃいけないなーんて言われてたからね。
エブリン  今は全くそんなことはないけどねー。最近じゃ、人間と結婚している仲間もいるくらいだし。
ハーパー  よく結婚なんてするわ……怖い存在じゃないとは言ったって色々大変でしょう……
エブリン  ねー。物好きな妖精もいるもんだよねー。
フロウ   やめなよ、メイジーちゃんのことを悪くいうのは。長(おさ)に怒られちゃうよ。
エブリン  別にぃ。人間の男と結婚した長の妹、メイジーちゃんのことなんて、私一言も言ってないけどぉ?ねぇ?パーちゃん。
ハーパー  ……
フロウ   ハーパー、どうしたの?
ハーパー  ねえ2人とも、あれ見てよ。
フロウ   え、どうしてたの?
エブリン  なになに?
 
(ハーパーが指差す方をフロウとエブリンが見る。人間の男が歩いてくる)

オーウェン あれ?おかしいな……
ハーパー  あれってさぁ……
フロウ   人間の男じゃない?
エブリン  えー?噂をすればじゃん。
ハーパー  こんなところになんのよう?
フロウ   道に迷ったんじゃない?
エブリン  うそ、ウケるー。
フロウ   ……ねえねえ。ちょっとあの男からかってみない?
ハーパー  フロウ、それ本気で言ってる?
エブリン  いいじゃん、面白そう。
ハーパー  エブリンまで何言ってるの!?
フロウ   普段あまり本領発揮できない私たちの美貌を活用するチャンス!
エブリン  人間たちには私たち、随分魅力的に見えるらしいしね。
フロウ   人間の男誑かす(たぶらかす)なんてなんか妖精っぽいじゃん?いい退屈しのぎにもなりそうだし。
ハーパー  やめようよ、何されるかわかったもんじゃないよ。
フロウ   あの男と繋がりを持てればあんたの好きな甘ーいスイーツ、持ってきてくれるかもしれないよ?
ハーパー  やりましょう!
エブリン  パーちゃん、切り替えはやーい。
フロウ   じゃあ、ちょっと私たちの本気、出しちゃおうか。
エブリン  本気出すまでもなくなーい?
 
(オーウェンが周りをキョロキョロみている。)

オーウェン おかしいな……こっちの道であってるはずなんだけど……

 (男がぶつぶつ呟いていると妖精3人が林の影から姿を表す)

フロウ   ねーねー、そこのおにーさん。
オーウェン う、うわぁ!あ、妖精?
エブリン  えー、お兄さん、よくわかったね。妖精知ってるの?
オーウェン え、ええ、知ってるも何も……
ハーパー  ねえ、人間のお兄さん!お兄さんの好きなスイーツ教えてよ!
オーウェン え、ええ?
フロウ   ちょっとちょっと。突然聞くことじゃないでしょそれ。
エブリン  ガツガツしてて、パーちゃんのかわいいが台無しー。
ハーパー  お兄さん、甘いものは好き?
フロウ   ねえ聞いてた?
オーウェン えぇ、まあ。妹が菓子職人で、よく味見させてくれるから……
ハーパー  お菓子職人!?何それ羨ましい!!
フロウ   ハーパーちょっと黙ってて!!(咳払いして、少し色っぽく)ねえおにーさん。そんなことよりもさぁ、私たちといいことしない?
エブリン  やだフーちゃん、色っぽーい。私もぉ、お兄さんといいことしたいなぁ。(フロウとエブリンが男を挟んで見つめる)
オーウェン あ、いや……えーっと……ごめんなさい、僕少し急いでて……
フロウ   ふーん……エブリン、ハーパー、集合。

 (男に背を向けてフロウ、エブリン、ハーパーが頭を突き合わせる)

フロウ   ちょっとちょっと、聞いてた話と違うんだけど!?
エブリン  あの男、私たちの色仕掛け全然効いてない感じー?
フロウ   人間の男なんてちょろいみたいなこと、前に誰か言ってなかった?全然ちょろくないじゃん!
ハーパー  (上の空で)お兄さんの妹さん、お菓子職人なんだって……いいなぁ……お菓子食べ放題……
フロウ   あんたが急にお菓子の話で切り込んだせいで調子狂ったのよ!
エブリン  パーちゃん、スイーツ絡むと人変わるよねー。
ハーパー  ケーキにクッキーにシュークリーム……本で読んだことあるお菓子、全部作れるんだろうな……いいなあ……
フロウ   あんたは少しの間黙ってなさい。それにしてもあんな冴えない男ですら手玉に取れないだなんてなんか癪だわ。どうにかして落としてやりたい!
エブリン  でもどうしたらいいの?
フロウ   もっと近づいてみる?
エブリン  えー?さっきだいぶ近かったと思うけどぉ?
ハーパー  ここはやっぱり共通の話題で盛り上がるに限るでしょ!美味しいスイーツについて……
フロウ   もうスイーツから離れて!
エブリン  とりあえずぅ、お話しながら距離を詰めてみる?
フロウ   そうね……見た目に釣られるタイプじゃないようだし。とりあえずやってみよう。
 
(3人は男の方に向き直る)

エブリン  ねぇ、お兄さん。ちょっとぉ、私たちとお話していかない?
オーウェン えぇ!?でも僕、ちょっと急いでて……
フロウ   ちょーっとだけだから。ね?(顔は笑っているが語気を強めて言う)
オーウェン は、はい……
エブリン  お兄さんはぁ、なんでこんな森深くにやってきたの?迷子?
オーウェン え、えーっと。ちょっとこの辺りに用事があって。
フロウ   人間が?この辺りに?珍しいわね。
オーウェン あ、あとあなたたちに伺いたいことがあるんですけど……
エブリン  (オーウェンの言葉に被せながら)そういえばぁ、お兄さん、名前聞いてなかったね。なんて言うの?
オーウェン あ、え、えーっと。オーウェンと言います。
フロウ   ふーん。私はフロウ。そしてこっちが……
エブリン  エブリンだよぉ。リンリンって呼んでもいいよぉ。
フロウ   で、この子が……
ハーパー  私ハーパー。人間の作るスイーツに興味があるの!ぜひあなたの妹さんとお話したいわ!(オーウェンの手を握る)
オーウェン あ、あぁ。よろしく。
フロウ   ちょっとあんたはがっつきすぎ!
エブリン  パーちゃんはスイーツのことになると見境ないもんねぇ。
フロウ   ところでオーウェン。
オーウェン な、なんでしょう?
フロウ   ぶっちゃけ、この3人の中だったら誰がタイプ?
ハーパー  がっついてるのは誰よ!?
エブリン  フーちゃん、距離の詰め方下手すぎぃ。
フロウ   うるさいわね。で?誰がいいの?
オーウェン え、えーっと……
エブリン  ちょっと気になるかもぉ。だれだれぇ?
オーウェン ごめんなさい……ちょっと僕……選べないです……
ハーパー  えー?
エブリン  ウェンウェンそれはなくない?
フロウ   なあに?それは3人とも美しすぎて選べないってこと?
オーウェン お三方とも素敵ですけど……その……僕には嘘でも選べないです……
ハーパー  どういう意味?
オーウェン 僕には心に決めた人がいるので……
フロウ   みんな、ちょっと集合。

(フロウ、エブリン、ハーパーがオーウェンに背を向けて頭を突き合わせる)

フロウ   どうなってんの?あの男!?私たちのことまったく眼中にないじゃない!!
ハーパー  心に決めた人ですって。素敵……
フロウ   素敵ぃ……じゃないわよ!つまりそれは何?私たち人間に負けてるのよ!
エブリン  いくら心に決めた人がいるって言っても人間は私たちの美しさには敵わないって聞いてたけどぉ?
ハーパー  誰が言ったのそれ?妖精のこと過信しすぎじゃない?
フロウ   ……もうあれを使うしかないわね。秘密兵器。
ハーパー  秘密兵器?
フロウ   エブリン、例の媚薬ってまだあったっけ?
エブリン  うん。確かぁ、長の部屋にあった気がするぅ。
ハーパー  フロウ、まさかあれを使う気なの?
フロウ   だってあの男、手強いんだもん。このままあいつ帰すなんて私のプライドが許さないわ。
ハーパー  で、でも、あの媚薬はパックが使い方を間違って大変なことになったからって使用禁止じゃなかったっけ?
フロウ   大丈夫よ、少しくらい。バレなきゃいいのよ、バレなきゃ。
長     ちょっとあなたたち。さっきから何を騒いでるの?
フロウ   う、長……
オーウェン あ、お義姉さん。やっと見つけましたよ。
エブリン  え?
ハーパー  お義姉さんってことはもしかしてあなた……
フロウ   メイジーの旦那さん!?
長     あら?知らなかったっけ?
フロウ   知らないですよ!だって見たことなかったもん。
エブリン  ねー。知らなーい。ウェンウェンどうして教えてくれなかったのぉ?
オーウェン いやだって君たち、僕の話聞かなかったじゃん……あぁ、それよりもお義姉さん、言ってた例のお薬もらえます?
長     ええ。用意してあるわ。(ポケットから小瓶を取り出し、オーウェンに渡す)
オーウェン ありがとうございます。これで一安心です。
フロウ   なんですか?この薬。
長     ただの風邪薬よ。
エブリン  えー。メイジーちゃん、どこか悪いの?
オーウェン ちょっと風邪をこじらせてしまって。風邪自体は大したことないんですけど、僕の街には妖精を見れる医者がいなくって、お義姉さんを頼ったんです。
長     メイジーにはあまり無理しないようにきつく言っておいてください。
オーウェン 伝えておきます。じゃあ、メイジーさんを待たせているので。この辺りで失礼します。
長     今度は妹と一緒に遊びに来てくださいね。
オーウェン はいぜひ。(ハーパーの方を見て)次は私の妹の作ったスイーツを持ってきますよ。
ハーパー  やった!!オーウェンさん、楽しみにしてるから!

(オーウェンが妖精の里を後に歩いていく)

ハーパー  いいなぁ、メイジーちゃん……妹さんのお菓子食べ放題……
フロウ   まさかあの男がメイジーの旦那だったなんて。
エブリン  ねー、超意外。
長     ところであなたたち。
エブリン  うっっ。
ハーパー  はい……
フロウ   なんでしょう……?
長     私の妹の旦那とっ捕まえてなあにたぶらかそうとしてたのかしら。
フロウ   えーっと……
エブリン  それはぁ……
長     しかも、使用禁止の媚薬を盗み出そうとしてたわよね?
フロウ   いや、あの……その……
長     私が納得できるよう、ちゃーんと説明してくれるかしら?(圧強めで)
フロウ
エブリン  ご、ごめんなさーい(3人同時に)
ハーパー
(了)

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