【シチュエーションボイス】涙の調香師


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所要時間5分ほど。

【あらすじ】
 雨の公園で1人泣く女性。そこに怪しげな男が近づいてきた。彼は香水を作る調香師を名乗っているのだが……
 
【登場人物】
 男……泣く女性に近づいてきた怪しい男。調香師らしい。




(雨。人のいない公園のベンチで一人、傘をさして座っている女性。泣いている。)
 
調香師:あ、やっと見つけた。探しましたよ。え、あなたなんて知らない?当然でしょう、だって僕たち、初対面だし。
じゃあ、あなたは誰なんだって、不思議な顔をしていますね?そんなに驚かないでください。涙がひっこんじゃう。せっかくの泣き顔が台無しじゃ無いですか。おかしなことをいう人だって?そうですね。普通だったら涙を拭いて、綺麗な顔が台無しですよ、
 なんて言って慰めるくらいはするでしょう。そんなことよりもあなたがどうして泣いているのか、僕に聞かせてください……おや、自分で言っておいてなんですが見ず知らずの男にすんなりとお話ししてくれるんですね。僕としては都合がいいですけど。ほうほう……今まで付き合っていた彼氏に振られたと。原因は彼の浮気。しかも、自分がずっと彼の一番だと思っていたのに本命は浮気相手の方だったと……なるほど、よくある話ですね。あぁ失礼。お姉さんにとっては一大事だ。おやおや?なんです?思い出したらまた涙が溢れてきましたか。いいですね。もっともっと泣いてください。顔がぐしゃぐしゃになるまで。あなたのその顔、嫌いじゃないですよ。ちょっと失礼。

 (調香師、ポケットの中から小瓶を取り出し、女の頬に当て、女の涙を採集する。)

調香師:これだけあれば十分でしょう。え、今何をしたかって?見ての通り、あなたの涙をいただいたんですよ。嫌だな、僕をそんな目で見ないでくださいよ。僕、これでも調香師なんですよ?聞いたことありますか?まぁ、ざっくり言えば香水を作っている人のことです。僕の作り方はちょっと特殊でね、人の涙を使うんですよ。これが結構人気でね。特に物好きのお金持ちの方に。この涙から作る香水でご飯食べさせてもらってるんですよ。どうやって作るかって?企業秘密ですよ。ライバルがいないんだから教えるわけないじゃないですか。ただ、せっかく涙をいただいたので一つだけ、いいことを教えてあげますよ。涙で作る香水はその人の悲しみや憎しみ、悔しさなどのマイナスの感情が強ければ強いほど、 魅力的に、艶やかな香りになるんです。だからお姉さんのこの涙、きっといいものになりますよ……あれ?お姉さんもしかして、僕を口説こうとしてらっしゃる?申し訳ありませんが、お断りします。 残念ながら僕は女性には興味ないのでね。でも、お姉さんなかなかいい性格をしてますね。だってそうでしょ?ついさっき、愛しの彼の浮気が発覚して、しかも捨てられたのにもう新しい男を狙っている。あなたは図太く生き抜けますよ。いい出会いがあるといいですね。それでは、またどこかでお目にかけましょう。さようなら。
 
(男、女の前から去る)
(了)

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